夢のありか

行ったもの、見たものについて

「芸人交換日記」「もう一度君と踊りたい」を観て

 ※物語のネタバレがあります

 

芸人交換日記

1月7日(火)18時の回 出演:小森隼/平子祐希(アルコ&ピース)

 
そもそも朗読劇自体が人生初めてだったので、いったいどうなるんだろう?というのはすごく興味深くて、1公演入って見てみたいな!と思っていました。
出演する芸人さんも回ごとにさまざまで、どの回もおもしろそうでした。

 
実際に観て思ったのは、「交換日記をしながらある芸人コンビの2人が心情を吐露し合っていく」というお話の進み方が朗読劇という形にすごくマッチしていたこと。

これはシンプルに、うまいな〜と思いました。

ただ台本を読んでいるのではなく(まあそうなんですけど)、2人が持っているのはあくまで交換ノート。そう見えるのが「台本を持って読むんでしょ」みたいなイメージから一歩解き放ってくれた感じがあって良かったです。
逆を言うと、交換日記形式じゃなかったらどんな朗読劇になっちゃうんだろう?と思ったりもしましたが…。


お話は破天荒なお笑い芸人とリアリストでどこか冷めているその相方の2人のお話。対照的な芸人のコンビなんてよくあるし、お話自体はそこまでアッと驚くようなことはなかったです。
売れている若手芸人への嫉妬やコンビでやっているのに評価されているのは片方だけだったり、そういうのは芸人世界ではよくあることだろうし、その中でテレビに出られずそのまま解散していく芸人さんたちもたくさんいるのだろうと簡単に想像できます。


夢を追いかけても叶わない人がいる。夢を追いかけて叶う人もいる。そして成功した、成功しなかったの結果に関わらず不幸は突然舞い降りてくるものである。

八王子ゾンビーズでも「夢破れた人の物語」というのは描かれていて、ゾンビーズの羽吹くんは諦めていたダンサーという夢をまた追いかけて終わるけど、芸人交換日記の2人には2人揃って夢を追いかけるエンディングは訪れない。

わたしはけっこう、夢に向かってがんばろう!と希望を持って終わる八王子ゾンビーズが好きだったので、芸人交換日記の終わり方はすごく切なくなった。

田中はテレビでブレイクして人気芸人となるけど、人気になったがゆえに苦しむし、甲本は夢を諦めて子供もできて、ようやく家庭を築いたのに命を落としてしまう。
時が経ち田中が息を引き取り、ようやくふたりは天国で漫才をする。


悲しいな〜。悲しい。

でも田中の選択も甲本の選択も責められるべきではないし、出会いと別れ、成功と挫折なんてどの人の人生にもつきまとうもの。
物語終盤、伝えられなかった甲本の想いが交換日記で紐解かれていく。
歪な物語が最後にきゅっとまとまっていくのも、話の内容は切なくて悲しいけど、組み立て方はうまいな〜と思った。

 
ときどき泣いたところもあったな。2人がコンビとしていられないこと、仲違いしたまま別れてしまうこと。
相手を思いやっての行動も、真意が隠されてしまえば裏切りに見えることもある。世の中って本当にうまくいかないし、次にようやくその人と会えるのが天国だなんて非情だ。でも、そういうものなんだ。


脚本に関しては、甲本が病気だと知ったときに田中から咄嗟に出た「よかった」みたいな台詞以外あまり気にならなかったし、前述した通り、交換日記の内容を読み上げて物語が進んでいく形式や終盤に物語が一気にまとまっていく感じがうまかったで、想像していたよりきちんとした脚本だと思った。

めちゃくちゃ感動する内容か?と言われれば、まあ、うーん…とはなるけど。


芸人交換日記ですごく良いなと思ったのは、隼くんの演技やパフォーマンス力の幅の広がりを感じたこと。本当に一番はこれ。


田中の悲しい気持ち、呆れた気持ち、希望を感じて高揚している感じ。田中という役は基本的には冷静な役だけど、そういう「冷静で真面目で、ちょっと偏屈なところもあるけど相方思いの熱い人」というキャラクター像にぴったりとハマる演技だった。
素直に、「隼くんってこんな演技もできるんだ!」と驚いた。(上から目線になって申し訳ないですが…)

これまでに隼くんはお芝居に対して不安があるということをザワのときのインタビューで見ていたので…。ラジオを聴いていても、「人には適材適所がありますから」みたいな発言もするし。

でもラジオ番組を複数持ったり、コラムを書いたり、そしてザワで演技に挑戦したり。元カレマニアにもちょっと出演したり。私は隼くんの出演作品をすみずみまで追っているわけではないので、知ったかぶりみたいになってしまうかもしれないけど、側から見て「すごくいろんなことに挑戦しているな」と感じています。

今回の芸人交換日記も隼くんにとってひとつの挑戦ではあったと思うけど、隼くんのポテンシャルを感じたし、演技の最初からキャストの挨拶の最後まで安心して見れたのは隼くんの実力がしっかりあるからだなと思った。


相方役の平子さんはさすがの喋りでとっても聞きやすかった。最後のMCで毎週ラジオをやっていること知ったし、無知だったのでジェネ高のナレーションをしていたのも知りました!笑
生の「龍友〜!」が聴けて得した感じでした!


芸人交換日記を観たことで、BOOK ACTのイメージが少し良くなりました。まずはそういう意味でパーフェクトイヤーの幕開けである1月に観に行けてよかった。

そして何より、隼くんのパフォーマンス力の幅を感じられたのがよかった。

そんなことを思ったのでした。

 


もう一度君と踊りたい

2/12(水)14時の回 出演:RIKU/与那嶺瑠唯/山本彰吾/岩谷翔吾/浦川翔平


もし行くのであればRAMPAGEメンバーの回に行きたいなあと思っていました。貴族のイベントとも日にちが被っていたし、RIKUさんの演技も見てみたかった。

でも、最初、わたしはチケットを取らなかった。

 
脚本家に対するネガティブな感情(嫌いという感情ではなく期待ができないというもの)、もう一度君と踊りたいは翔太くんの死を連想させるような物語になっているというようなツイートを見かけたことがあって、そんな物語を私が観て受け止め切れるのか、その物語を演じるRIKUさんが耐えられなくなっちゃうんじゃないかと思ったのです。もちろん、このRIKUさんへの感情は私の御門違いな心配なわけですが…。彼をみくびるんじゃないよ〜!

 
と、けっこうギリギリまで悩んでいたのですが、せっかく時間があるし、あの5人の生の演技が観れる機会はそうそうないし、脚本の内容だって自分が目にしないとどう思うかなんてわからないよなと思って行くことにしました。
運良くチケットを譲ってくださる方がいたので本当にラッキーでした。(ありがとうございました…!)

 
内容としては、やっぱり最後は悲しかったけど、思ったより希望のある結末で、よかった。いや、死をまえにして希望なんていう言葉は語弊があるかもしれないけども…。

 
りんちゃんという貧乏な家庭で生まれた少年。何も熱くなれるものがなかった彼が、ダンスと出会い、仲間と出会い、自信が持てるようになって、人生が好転していく。

たーちゃんという裕福な家庭で生まれた少年。親に従うだけの彼が初めてダンスという心から熱くなれるものに出会い、そしてりんちゃんという親友でありライバルでもある運命の人と出会い、変わっていく。

そして、そんな2人に待ち受けているのは悲しい結末。


私は物語の超序盤でけっこう泣いてしまいました。

それは、りんちゃんと母親とのやりとりのシーン。ダンス教室の高い月謝が気になってダンスを習いたいと言えないところや、ダンスシューズの値段を気にしてあえて安いシューズを選ぶりんちゃんの気持ち、それに対してやさしく導いてあげる母の言葉もどちらもすごく共感できて、泣いちゃった。とくに自分はもう母になってもおかしくない年齢なので、りんちゃんやたーちゃんたちの若者の心情より母親の気持ちがよく想像できて涙が出た。

なので後半の展開よりここら辺が泣いたかな!笑

 
事務所に選ばれなかったあとのりんちゃんの悲痛さは本当に見てられなくて、やましょうさんの演技もすごく上手だったから見ていて本当に苦しくなった。りんちゃんから見れば、たーちゃんはなんでも持っている。お金も、実力も、他者からの評価も、輝かしい未来もすべて。あ〜、悲しい。切ない。

 
りんちゃんは絶望のなかでどんどん選択をミスっていく。やさしさを拒絶して、この世のすべてに吠えて、自分を痛めつけて、お酒で潰す。
そして気付いたときには、たーちゃんと永遠の別れとなったことを知る。

 
えー、そんなことって…。

たーちゃんの死は本当に突然で、ちょっとびっくりした。いや、物語の流れ的にあそこではあるのだけど…。でも、人に突然襲いかかる死というものは、本当にそんなものなのかもしれない。


大切な人の死をわかっていて、それでもその日を巻き戻すことができたら。結末は変えられないとしても、またやり直せるとしたら。
りんちゃんはひとつずつ、自分のした選択をやり直していく。
同じシチュエーションでも、空の風景も投げかけられる言葉もあの絶望のなかで感じたものとは全く違うように感じられて、真っ黒だった世界がすごく色鮮やかになった。

 
物語の最後に驚いたのは、同じくたーちゃんも自分の運命を知っていたこと。
自分が死ぬとわかっていて、それが変えられない運命だとして、その日をどう生きるか。その一つの気持ちの変化で、見えるものがガラリと変わってくる。
自分の運命を知りながらひとつひとつ慈しむように行動するたーちゃんは、本当に強い人だと思った。

 
最後。
みんなで踊るパフォーマンスで、りんちゃんとたーちゃんが一緒に踊れて本当に良かった。伝えたい気持ちが伝わって本当に良かった。祈るように激しく舞う5人に、真ん中で踊るりんちゃんに、胸がぎゅっとなった。


あの日を戻せなかったらりんちゃんは一生自分を恨む。それこそ、人生最後の日まで自分を痛めつけていたのだと思う。
だから、りんちゃんに救いがあってよかったと心の底から思った。


とまあ、脚本に関しては、夢を叶える人と叶えられなかった人という題材がまた出てきて、「またか…」というところはありましたが、それより強く描かれていたのは「いま一瞬、このときを大切に生きよう」ということ。よくあるテーマではありますが…。

大切な人の死はいつ訪れるかわからない。自分に降りかかってくる可能性すらある。

だから、いまというこの時間を大切にしよう。道徳の時間かよ!と思う人もいるかもしれないけど、こういうことって案外全然意識できなかったりするから、改めて周りのひとやもの、いま生きているこの瞬間を大切にしようと思えました。


心配していた翔太くんの死を連想する、というようなこともなかったです。(心配というのは、そういうお話だったら自分が受け止められないかもという話で、翔太くんについて表現することを否定しているわけではありません)
もちろん、りんちゃんが玲於くんの回とかファンタメンバーが出ている回は強く感じてしまったかもしれませんが…。

私はどちらかといえば東日本大震災を思い出しました。当時私は宮城にいたので、停電して蝋燭の明かりで一夜を過ごしたあと、家に届いた一枚の新聞で1万数千もの人が命を失ったことを知りました。父親が海に近いところで働いていて当時はすぐ連絡がとれなかったので、そのときに感じた恐怖と、自分がこの世に生きていてよかったという安心感は今でも忘れられません。

私にとって最大の死の衝撃が震災の記憶だったので、今回の劇を見て一番に思い出したのだと思います。そしてその記憶が翔太くんのものだった人もいる。そういうことなんだと理解できたので、実際に観に行ってよかった。


物語の内容は悲しくて、でも「いまこの時を大事にしよう」と観終えたあとに思えたので希望のあるお話だったと思います。

 


みんなの演技は本当に良かったよ!!!!


やましょうさん。ちょっと拗ねた感じ、自暴自棄になっているときの叫び。明るいだけじゃなく、負の感情の表現がとても上手くて、こんな演技もできるのか!とびっくりしました。 


しょうごくん。本当〜〜〜〜〜〜に演技が上手い…………。チア男子のときも上手いなあと思ったけど…改めて。声も滑舌も良くて…。たーちゃんのやさしい性格としょうごくんの声音も合っていて、本当にぴったりだった!!!もっとしょうごくんの演技が観たい、そう思いました。舞台もまたやって欲しいな…。


RIKUさん。いや、声が良い〜〜〜!!!タカシ兄ちゃんのときの演技がとくに好き!!キラキラしたお兄さん役ハマっている…。りくさんの演技の仕事ももっと見たいよ!!最後のダンスもすてきだったよ!!!ミュージカルとかやってるのも見てみたい!


しょへくん。多彩すぎた。しょへくんがいたから笑いの要素がかなりプラスされてて、悲しいだけの物語じゃなくて良かったな〜!先生役のときの演技がすごく好き。ああやって少しの台詞で笑いをとるの、エンターテイナーだな〜。でも長崎弁多用のあれはキャラ的に合っていたのだろうか!?しょへくんが演じた役を他の人はどう演じていたのか気になった!笑

 
るいくん。演技を見たのが初めてだったので、「こんな演技もできるんだ!」と思った。やさしい本人の性格が声にのっかっている人だから、今度はもっとダークな役とかが見たいな〜!るいさん=とにかくダンスのイメージが強いから、こういう演技の場とかも含め、いろんなことに挑戦しているのは見ていて楽しい!

 

最後、キャスト挨拶のときベシャベシャに泣いたRIKUさんが出てきた。声を出すのもやっと、な感じで、隣にいたしょうごくんがやさしく体を支えていた。

それを見て、あ〜やっぱり最後にRIKUさんは泣いてしまうよね…と思ったのと同時に、演技中脚本に飲み込まれてしまうRIKUさんを見るのが怖いと思った自分が本当に浅はかだったなと反省しました。彼の可能性をファンである自分が信じないなんて。

改めて、みんなの挑戦を直接自分の目でみることができてよかったなと思ったのでした。

あと、ダンスの部分もキャストによって異なるようなので、また別の回を観たら見方が変わっておもしろいんだろうな。そこはさまざまなキャストで公演する醍醐味なので、別の回も観てみたいなと思いました。

 

脚本家問題について思うこと

 脚本家である鈴木おさむさんについて、ネガティブな意見をたくさん目にします。

私も、彼に対して良いイメージは持っていないですが、あくまで脚本家として仕事をするのであれば面白い脚本を書いてくれれば別に問題ないと思っています。

 
彼が関わった作品として「八王子ゾンビーズ」「芸人交換日記」「もう一度君と踊りたい」を観ましたが、夢と挫折、そして死などの人生の無情さを描いているのは共通している。

似たようなテーマだなあとは感じてしまうので、次に脚本をするのであれば違うテーマの作品が見たいかな。まあ、そもそもLDH側から「こういうテーマで!」と依頼されている部分もあるかもしれないので、彼そのものを責めることは私はあまりできませんが…。

ありふれた日常の中に潜む死と命の尊さについては、最近Twitterで話題の「100日後に死ぬワニ」も似たようなテーマですよね。「死」がどこか遠い、豊かな社会だからこそ取り上げられやすいテーマなのかな。


芸人交換日記ももう一度君と踊りたいも、涙がでるシーンはあったし、とくにもう一度君と踊りたいでは「毎日大切に生きよう」と思えたので、心を動かされるシーンはいくつもありました。もちろん、それはメンバーの演技があったからではありますが…。

とにかく、結果的には感動していた自分はいたわけです。他にも感動している人がいるのも会場にいてわかりました。


脚本家が嫌いだから好きなメンバーが出ていても観に行かない。これも選択の一つ。
好きなメンバーが出ているからとにかく観に行く。これも選択の一つ。

観に行くのも行かないのも、その人が選択したものなので否定される理由はありません。
そして観たあとにどんな感想を抱いても、その人が見て感じたものならそれが真実だし、部分的であれ心が動かされたのであれば批判される理由はないです。


BOOK ACT関連のツイートを見ていると、「あの人の脚本で感動するなんて程度が低い」みたいな言い回しのつぶやきがあって、ちょっと悲しいな〜と思うときがあります。

他にもいろいろ意見がありますよね。私は「批判も肯定も、実際に見ている人の意見や感想」がまず第一に「なるほどな」と思って見るので、観劇していない人の意見はあまり気にはしていないのですが…。※これは私のなかで参考にする意見の優先順位の話で、観てもないのに意見するなという否定ではありません

でも「感動した」とか「泣いた」とか「良かった」とか、自分の感想が言いにくいなと感じている人がいるのであれば、そんなこと気にせず自分が感じたことを大切にしてほしいなと思います。


「ヒーローよ、安らかに眠れ」に関しても、脚本があがったのが数日前だとか読み込みが足りなくて残念だったなどの感想を見かけました。一方、感動したという人の感想も、演技はよかったと褒める人の感想も。

観てないけど物申したい人もたくさん物申している中で、行きたいと思った人や実際に観て心動かされた人が否定されるようなことはないようにと心から願っています。
もちろん、お金を落とさないことが自分の主張を通すうえで大事なんだと思っている人もいるし、その意見や行動も否定できません。

 キャストを泣かせてそれを見せて観客を泣かせようとしている部分もあると思いますが、それの是非についてもなんとも言えません。


まあ、そもそも脚本がおもしろいから最高〜!というのはいちばんハッピーなことなので、よりたくさんの人がラブドリームハピネスになれるような公演が増えればいいですね。


まだ公演は続いているし、また別のシーズンで公演があるかもしれない。
そのときに行くも行かないも、自分の心に従って選択したいなと思います。